NFTの種類
目次
- はじめに
- NFTの主な種類一覧
2.(1) コレクタブルNFT
2.(2) 音楽NFT
2.(3) ゲームNFT
2.(4) バーチャルワールドNFT
2.(5) ドメインNFT
2.(6) ユーティリティパスNFT - おわりに
1. はじめに
2017年以降、NFT融市場は飛躍的な成長を遂げてきた。2021年には、非公式なOTC取引を除くNFTの年間時価総額が113億300万ドルを超え[1]、ブロックチェーンの活用例の一つとしてエコシステムを支えている。2021年以降、市場が巨大になるにつれNFTの種類は増え、アート文脈からSNSのアイコンなど多岐にわたる目的で活用されている。本レポートではNFTの種類について概説し、それぞれの種類について具体的事例を端的に示し、既ローンチされている代表的なプロダクトを紹介する。
2. NFTの主な種類一覧
2.(1) コレクタブルNFT
コレクタブルNFTとは、コレクションを楽しむNFTであり、一般的に数千体以上の統一性のあるデザインを用いたNFTコレクションを指す。コレクタブルNFTは、2021年後半からのNFTバブルの火付け役とされ、欧米ののインフルエンサーがSNSのプロフィールピクチャ(PFP)としてNFTを活用したことに端をなす。中でも顕著な事例として音楽家のSnoop Dogg、Eminem、Steve Aoki、Justin Bieber、Madonna、プロアスリートのSerena Williams、Stephen Curry、Neymar Jr.などが自身のPFPをNFTに変更した[2][3]。以下に、コレクタブルNFTの特徴をしるす。
- 各NFTが属性値(Attributes/Traits)を持つ
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全く同じ全く同じ画像になるNFTが存在しないように、NFTに機械的に属性値が付与される事が多い。Clone XというコレクタブルNFTでは、服・口・アクセサリー・髪・目・背景など全部で12種類の属性値が用意されており、属性の中でくくられた類似点が見えてくる。
例えば、骨格や肌の色を決める[DNA]というAttributesを[Human]とした場合と、[Undead]を選択した場合のNFTの画像(図2・3)を見ると、それぞれ肌の色に統一性が見られる。
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- コミュニティが活発
- コレクタブルNFTでは「コミュニティ」を主軸としたプロジェクト運営が行われている。
「コミュニティ」とは、NFT保有者や、NFT応援者が集う集団のことで、以下のような特徴を持つ。- ユーティリティの提供が豊富:NFT保有者に提供されるインセンティブの事をユーティリティと呼ぶ。例えば、保有者限定のオンラインチャットへの招待、他のNFTのホワイトリスト(発行権)の配布、ライブイベントへの招待等がある。
- NFT保有者とNFT運営者のコミュニケーション:一見、オンラインサロンに似ているが、DiscordやTelegram等のチャットツールを用いて、NFT保有者とコミュニティ運営者が頻繁にコミュニケーションをとっている。
- コレクタブルNFTでは「コミュニティ」を主軸としたプロジェクト運営が行われている。
2.(2) 音楽NFT
音楽もまた、NFTと相性のよいジャンルである。特に、違法ダウンロードを抑止できる観点から期待されている。音楽データの所有者を明確にすることで、データ所有者以外からの違法ダウンロードやアップロードの抑止にも繋がる。代表的なものは、アメリカの人気ラッパーSnoop Doggが、2022年3月に立ち上げた「Dogg on it: Death Row Mixtape Vol. 1」というNFTで、彼がOpenSea上でミックステープをNFT化したもの等がある。
2.(3) ゲームNFT
ゲームNFTは2021年にゲームと経済を掛け合わせた「GameFi」として広く、web3領域の関心を集めた。「GameFi」には以下の様な特徴がある。
- ゲーム提供企業は早期の資金調達が可能
- ゲームローンチ前にゲーム内アイテムをNFT化し、販売価格よりも安く販売し資金調達することで、クリエイターがゲームの開発に専念できる。また、先にゲーム内アイテムを配布することで、初期ユーザの囲い込みにも繋がる。
- ゲーム内アイテムの転売が可能
- ゲーム内アイテムをNFTの標準規格で発行することで、自分でアイテムを作成して販売したり不要なアイテムを転売する事が可能である。
- ゲームアイテムは相互運用性がある
- 複数のゲーム間で自分の保有しているゲームアイテムを利用することも可能である。
2.(4) バーチャルワールドNFT
VR技術の発展により、メタバース関連のプロダクトが増えるにつれて、メタバース上の土地をNFTとして発行するバーチャルワールドNFTも安定的な賑わいを見せている。
バーチャルワールドのNFTの特徴として以下2点がある。
- バーチャルワールドの土地上にあるコンテンツによって地価が変化する
- 実世界においては駅や都市部へのアクセシビリティが地価に影響を与えるが、メタバースは一瞬で移動できるため、アクセスによって地価が変わるという概念が存在せず、バーチャルワールドの土地上にあるコンテンツによって地価が変動する。
- 仮想資源のユーティリティが付与される事がある
- 世界最大規模のNFTプロジェクトを手掛ける「Yuga labs」が提供するメタバース「the Otherside」では、「KODA」と呼ばれる原始生物が限定10,000体でどこかの土地に住み着いている。この「KODA」付きの土地は他の土地の数倍近くの値段で取引されています。web3に天然資源の概念を持ち込んだ興味深い事例である。
2.(5) ドメインNFT
ブロックチェーンを触る上で不可欠な「ウォレット」のアドレスもまた、NFTとして発行して取引を行うことが可能である。ドメイン名NFTの特徴は以下の通りである。
- 識別性が高い:ドメイン名NFTは「ウォレット」の文字列をより識別しやすい名前に置き換えてウォレットに格納する。通常、ウォレットアドレスはランダム生成される数十字をユーザに割り当てますが、ウォレットアドレスを毎回コピペするのは大変で確認作業にストレスがかかる。
- 投機性がある:土地NFTの住所と絡めたドメインNFTや有名な単語のドメインNFTは非常に高値で取引されることもある。
2.(6) ユーティリティパスNFT
ユーティリティNFTとは、そのNFTを保有する事で特別な権利が獲得できるNFTのことである。主に、保有することで限定機能が解放されるソフトウェアや会員権の文脈で多用されている。例えば、下図はNFTの詳細な分析を提供している「NFT Nerds」の会員権NFTである。このNFTを保有した状態で「NFT Nerds」に飛ぶと、無料プランでは閲覧できないすべての機能が解放される。
ユーティリティNFTは、一度購入したら、自分の意志で手放さない限り一生アクセス権を保有できるので「Lifetime pass」とも呼ばれている。
3. おわりに
NFTは2021年以降、欧米発のインフルエンサーによってPFP用途で急速に認知が広がった。以後は、音楽・ゲーム・ドメイン・バーチャルワールドなどにユースケースが拡大したことでEthereumエコシステムの一角をなすセクターへと成長した。
EthereumにおけるNFTセクターは、2023年夏時点では、デジタル資産関連のNFTの週次取引枚数は2022年6月に記録した約75万点に比し2023年6月には約5万件に減少しているが[5]、それと同時にNFTのレンタル機能(ERC-4907)や他人に譲渡不可のNFT規格(SBT規格)など新たな技術も順次提案されており、賃貸契約や証明書などの産業でも応用が期待されている。アート文脈や投機文脈での取引が減少する中で、新しい産業での展開を通してNFTの種類が今後も拡大するかは注目である。
参考文献
[1]:Raynor de Best, “Market capitalization of transactions globally involving a non-
fungible token (NFT) from 2018 to 2021”. statista.2023-05-23. https://www.statista.com/statistics/1221742/nft-market-capitalization-worldwide/ (Accessed: 2023-06-30).
[2] : Goldstein Caroline. “Which Celebrities Have NFTs as Profile Pics? Here Are 21 of the Most Unexpected, From Ozzy Osbourne to Shonda Rhimes”. artnet news 2022-01-27. https://news.artnet.com/market/nft-celebrity-profile-pics-2064502 Accessed: 2023-06-30).
[3] : Hayward Andrew. “The Biggest Celebrity NFT Owners in the Bored Ape Yacht Club”. Decrypt. 2022-03-28. https://decrypt.co/86135/biggest-celebrity-nft-owners-bored-ape-yacht-club (Accessed: 2023-06-30).
[4] : thirdweb. https://thirdweb.com/ (Accessed: 2023-07-08 ).
[5] : Outumuro Lucas. “NFT Capitulation Continues -BAYC, Azuki and Blur face tumultuous market”. Medium. Published in IntoTheBlock. 2023-07-08. https://medium.com/intotheblock/nft-capitulation-continues-3ae96ff9e79b (Accessed: 2023-07-08 ).