Web3.0への道:Web1.0、Web2.0との比較とWeb3.0の基礎
目次
- はじめに
- Web1.0,Web2.0
- Web3.0
1. Web3.0とは?
2. Web3.0の全体像と構成要素
3. Web3.0で期待されること - おわりに
1. はじめに
昨今、様々な場所でWeb3.0という言葉が使われており、人によって意図が変わるような多義語になりつつある。それもそのはずで、Web3.0では、まだインパクトの大きいユースケースが生まれておらず、様々な事業会社が新たな事業を立ち上げようと取り組んでいる所である。
そのような状況において、本レポートでは改めてWeb3.0とは何か?Web1.0、Web2.0と比較してどう異なるのか?を纏めた。本レポートは、Web3.0初心者にも読みやすいように事例を挙げつつまとめているため、詳細な議論には話が及んでいないことを了承頂きたい。
2. Web1.0,Web2.0
まず、本レポートの前提として、Web1.0とWeb2.0を簡単に解説する。Web1.0とは、一般的にインターネットの黎明期である1990年代から2000年代前半を指す。静的なwebサイトのように、サービスプロバイダーからユーザーへの一方向の情報発信できる時代でした。次に到来したWeb2.0は、一般的に、インタラクティブで対話的なウェブが普及した時代2000年代後半から現在までを指す。ソーシャルメディア、オンラインショッピング、クラウドサービスなどのように、プラットフォーマーとユーザー間で双方向の情報発信が可能となった。
Web3.0の登場に関わるためWeb2.0について補足説明を行う。Web2.0の特徴として、参加ユーザー数や提供コンテンツ量によるネットワーク効果が働いて、特定のプラットフォーマーが加速度的に成長し、市場の寡占が起きていることがある。これは市場環境としてだけでなく、個人情報保護の観点で問題を抱えている。
ユーザーが特定のプラットフォーマーに集中するため、プラットフォームに蓄積したユーザーのデータを恣意的に利用できるようになってしまった。実際に、2013年に起きたスノーデン事件(NSA元局員のエドワード・スノーデンが、NSAが世界中の人々の通信を監視していることを暴露した事件)を筆頭に情報管理における事件が複数回起きている。そのような状況を踏まえて、最初はメリットを享受していたユーザーも、徐々にWeb2.0の情報管理の方式を問題視した。結果としてWeb2.0のアンチテーゼとして、Web3.0のコンセプトが生まれた。
3. Web3.0
本章では、前章までの導入を踏まえて、Web3.0の定義、Web3.0を支える主な技術、Web3.0に期待されることについて解説していく。
3.(1) Web3.0とは?
前章の通り、Web2.0では、特定のプラットフォーマーにデータが集中して、プラットフォーマーが恣意的にユーザーのデータを利用できるなど、情報管理における問題があった。そこで、データを自ら保有して分散化させるというWeb3.0のコンセプトが出てきた。因みに、これは2000年頃に流行ったWinnyというP2P型ファイル共有ソフト(サーバーがファイルを管理せず、P2Pネットワークに参加する参加者達がファイルを保有する仕組み)と同じコンセプトである。
上記コンセプトを実現する技術としてブロックチェーンが必要となる。ブロックチェーンはP2Pネットワークと暗号化技術の発展により生まれた。Winnyではファイル共有を目的に利用されていたが、ブロックチェーンでは暗号資産の取引などの価値交換が可能な金融プラットフォームとなっている事が異なる点である。
3.(2) Web3.0の全体像と構成要素
本項では、Web3.0の全体像と構成要素とその関係性を解説していく。前項で、Web3.0の概要について触れてきたが、Web3.0の構成要素として①ブロックチェーン、②暗号資産・トークン、③NFT、④メタバース・DAO、⑤投資家で成り立っているかを解説していく。
3.(2).① ブロックチェーン
まず、Web3.0を実現するための技術としてブロックチェーンを簡単に解説する。これは分散型台帳とも呼ばれ、特定の帳簿管理者を置かず、参加者が同じ帳簿を共有しながら資産や権利の移転などを記録していく技術のことである。後述する暗号資産、NFT、メタバースではこの技術を使用している。
代表例としてビットコインブロックチェーンや、イーサリアムブロックチェーンが挙げられる。
3.(2).② 暗号資産・トークン/DeFi
次に、暗号資産・トークン/DeFiについて簡単に解説する。暗号資産・トークンは、ブロックチェーン技術を利用したデジタル資産を示している。中央管理者が不在で、誰とでも直接取引ができる。その特徴を活かして、現実世界/メタバース問わずに、決済通貨/ガバナンストークンとしてのユースケースが期待されている。代表例はビットコインブロックチェーンのネイティブトークンであるBTCや、イーサリアムチェーンのネイティブトークンであるETHなどがある。
DeFiはDecentralized Financeの略で分散型金融とも言われ、ブロックチェーン上に構築された金融アプリケーションの総称である。暗号資産の決済機能(送金・残高確認など)を有するブロックチェーン上でスマートコントラクト技術(用途に応じた処理を動作させる技術)を活用した様々な金融サービスが提供されている。また、特定の管理主体を必要としないパブリックな分散型構造であるため世界中の誰でもサービスを提供・使用できるなど、既存金融にはない性質を持つ次世代の金融として注目されている。DeFiプロトコルの代表例としてUniswapやAave 等がある。
3.(2).③ NFT
次に、NFTについて簡単に解説する。NFTは、ブロックチェーン技術を利用したデジタル資産の所有状態や独自性を表すトークンを示している。アート、音楽、ゲーム内のグッズ(スキン、コスメ、武器)など様々なデジタルアセットを表現する事ができる。NFTの代表例としてNBA Top Shot 等がある。
3.(2).④ メタバース・DAO
次に、メタバース・DAOについて簡単に解説する。メタバースは、インターネット上の仮想空間に作られた世界であり、ユーザーはその世界の中で、自分の分身「アバター/キャラクター」を自由に操作し、様々な活動ができる。メタバース内の経済活動はトークンを通じて行われ、デジタルアセットの所有状態はNFTで表現される。代表的なメタバースとしてDecentraland、The SandBoxがある。
DAOは、ブロックチェーン技術を活用した自律分散型組織の1つです。中央管理者が不在でも、組織の意思決定はあらかじめブロックチェーン上に実装されたプロトコルに基づき投票・決定される。DAOは公平性・透明性・低コスト等を実現する。
3.(2).⑤ 投資家
次に、Web3.0領域の投資家について簡単に解説する。起業家たちがブロックチェーンやアプリケーションなどのサービスを開発する際に資金調達を行うが、その際に活躍するのがベンチャーキャピタルや機関投資家の存在である。従来のエクイティ出資だけではなく、Web3.0の世界では各プロジェクトの発行するトークンへの出資が盛んになっており、Web3.0業界の発展の大きな役割を担う。アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)を代表とするトークン出資を行うベンチャーキャピタルによるWeb3.0企業への出資は足元でも活発であり、2022年には6000億円規模のファンドを立ち上げるなど長期的なWeb3.0業界の発展に貢献している。
3.(3) Web3.0で期待されること
3.(1)項にてWeb3.0の概要について触れてきたが、本項では図4に記載しているWeb3.0に期待される3つのことを解説していく。
3.(3).① 分散性
1つ目は分散性である。データや権限がネットワーク全体に分散され、個々のユーザがデータの所有者となれることが期待されている。この分散性によって、ブロックチェーン上でのデータ保存におけるセキュリティの強化が図られる。
3.(3).② 透明性
2つ目は透明性である。誰もがブロックチェーン上のデータや、ブロックチェーン上のアプリケーションの仕組みが可視化されることが期待されている。この透明性によって、ブロックチェーンの参加者には、公平性・正確性が担保されるインセンティブが働く。
3.(3).③ 相互運用性
3つ目は相互運用性である。どんなブロックチェーン/アプリケーション/プラットフォーム上の取引でも自由かつスムーズにできることが期待されている。
4. おわりに
本レポートでは、Web3.0がどのような背景を持って誕生し、Web1.0やWeb2.0と何が異なるのかについて説明してきた。Web3.0は、従来のインターネットから脱却し、分散型のシステムを導入することを目指しているが、まだ新しい分野であり、普及には一定の時間と課題の克服が必要だ。次のレポートでは、Web3.0を代表するサービスについて具体的な事例を通じて解説し、さらにその現状の課題に迫る。