既存金融と分散型金融の融合:Finexify社DeFi Green Legend Fundの概要
目次
- はじめに
- ファンドの特色と概要
- 運用プロセス
- ファンドのパフォーマンス
- ファンドのサイズ
- 手数料について
- おわりに
参考文献
1. はじめに
2018年頃に誕生したDeFi(分散型金融)は、2020年のDeFiサマーを契機に急速に成長した。その中でも、流動性供給による収益戦略が注目され、イーサリアムやステーブルコインなどの暗号資産を用いた資産運用が広がっている。本レポートでは、このような流動性供給の仕組みを活用したFinexify社の「DeFi Green Legend Fund」について、その特色と概要、運用プロセス、ファンドのパフォーマンスや手数料に関する情報を解説する。本レポートに記載する内容は、Finexify社が独自に開示している資料[1]に基づいたものであり、第三者によってその信ぴょう性や同社の信頼性が保障されているわけではない点、情報提供のみを目的としており投資の勧誘や売買の推奨を目的としていない点についてお含みおきを頂きたい。
2. ファンドの特色と概要
DeFi Green Legend Fundは開示されているタームシート[2]によると、主にDEX(Decentralized Exchange、分散型取引所)への流動性供給により、収益を得ることを目的としている。顧客からの受付資産はイーサリアムとステーブルコイン(USDT、USDC、DAI)のみとなっている。リスクを最小限に抑えながら、上げ相場と下げ相場の両方で収益を追求するオープンエンドのファンドであり、中期、または長期投資家が顧客対象となっている。同社の開示情報によると、顧客の内訳は、富裕層やイーサリアムやステーブルコインを保有している個人投資家と、ヘッジファンド、オルタナティブファンド、ベンチャーキャピタルなどを中心とする機関投資家に分けることができる。リスクを抑えるために分散投資が行なわれており、株式などの伝統的資産やビットコインなどの暗号資産市場との相関性は低いと同ファンドは標榜している。
3. 運用プロセス
同ファンドでは、ファンドマネージャーの判断によって投資先を選別するアクティブ投資と定義している。リバランスを行い、変動損失のリスクを避けながら、流動性供給により収益を得るデルタニュートラル戦略が採用されており、年間の目標リターンは15%から20%となっている。ただし、この数字はタームシートに書かれているものであり、同社Webサイトの「よくある質問」[4]を見ると、30%から50%と書かれているので、タームシートの数字は保守的に打ち出している可能性がある。利益の還元については、四半期ごとに再投資、または配当のどちからを投資家が選択することができる。同ファンドを運用するチームを見ると、構成員の経験年数はブロックチェーンやテック、金融の分野などにおいて合計50年を超えている。豊富な経験に裏付けされた投資が行われており、安心感があると言えよう。
4. ファンドのパフォーマンス
ファンドの運用開始日は2021年2月12日であり、設定来のパフォーマンスは2022年第4四半期末まででステーブルコイン(ドル建て)が+70.45%、イーサリアムが+87.08%[2]となっている。預かり通貨が異なるので一概に比較することはできないが、これらは日経平均やS&P500などの各国主要インデックスを大きく超えるものであり、非常に好調であることから、投資家にとっては魅力的な投資対象であると考えられる。さらに月間で見ても、両資産のパフォーマンスは際立っており、マイナスの月は5回のみとなっている。
2023年1月にリリースされたFinantial Result Report[3]によると、2022年第2四半期以降採用されている戦略によってImpermanent Lossの影響を最小限にし、同年第4四半期に起きたFTX事件のような市場にストレスがかかる環境下でも奏功したとの記載がされている。結果として、ステーブルコイン建て、イーサリアム建ての両方で同四半期の間で+3.91%のリターンを生み出したとしている。
5. ファンドのサイズ
2022年第4四半期時点で、同ファンドのサイズは2.5百万ドルであることが確認できる[1]が、2億ドルまでの受け入れが可能とのこと。最低投資金額は、上述の目標リターンと同様、タームシートを見ると10万ドルであるが、同社Webサイトの「よくある質問」には、5万ドルと書かれているので、この点については確認が必要だろう。また投資家が米国内在住である場合、法的に同ファンドに投資することはできない形となっている。
6. 手数料について
同ファンドは顧客に対して管理報酬2%、成功報酬20%を手数料として設定している。これは、おそらく伝統的なヘッジファンドにおける手数料体系に沿ったものだろう。ただし、この点においても「よくある質問」では、管理報酬0%、成功報酬40%と、タームシートとの差異がみられる。近年の競争激化により、手数料の設定値は下落傾向にある。2023年現在、昨今のヘッジファンド市場の状況に鑑みると、40%は高く感じられるが、革新的な運用を行っていると考えれば、妥当だという見方もできる。さらに、上述したパフォーマンスを維持できるのであれば、さらなる手数料の引き上げがあったとしても、多くの投資家は資金を引き揚げない可能性がある。なお、12ヵ月以内に資金を引き出す際の手数料は2%となっており、投資家は年間1回のみ手数料を支払うことなく、資金を引き出すことができる。
7. おわりに
本レポートの前半では、Finexify社が展開するDeFi Green Legend Fundの仕組みと、ファンド運用の基本的な特徴について紹介しました。投資家にとって重要な情報である運用プロセスやパフォーマンスについては、詳細が開示されていない部分も多いため、十分に注意して検討する必要があるといえます。本ファンドが提供する新しい投資機会は魅力的ですが、リスクも伴うため、資産の分散投資を含めた慎重な判断が求められます。続くレポートの後半では、運用会社のバックグラウンドやリスクについて詳しく説明しますので、合わせてご参照ください。
参考文献
[1]:Finexify社 https://www.finexify.com/ethereum-fund
[2]:Finexify社タームシート https://www.finexify.com/_files/ugd/0c5e79_fc3beb69682845c4b6157f589e5abeba.pdf
[3]:Q4'22 Financial Results: https://www.finexify.com/post/q4-22-financial-results-finexify-reports-9-47-ytd-gains-in-the-worst-market-turmoil-since-2018