frxETH V2:Liquid Stakingの本質とfrxETHの革新


目次

  1. はじめに
  2. Liquid Stakingの本質は「融資」
  3. frxETH V2の革新とその仕組み
     1. 悪質なValidatorを清算し削除する
     2. Permissionless Validators
     3. 融資PoolのETHとCruve AMOでの運用
  4. おわりに

1. はじめに

Liquid Stakingは、単なるステーキング方法に留まらず、資産運用の新しい形を提案しています。その本質は「融資」にあります。本レポートでは、Liquid Stakingがどのように資産を効率的に運用し、ETHの保有者に対して利益をもたらすかについて説明します。そして、Frax Financeが開発するfrxETH V2の革新的な仕組みを深掘りし、Validator市場の透明性と効率を向上させるための技術的なアプローチを探ります。

今回は、その中でリキッドステーキングについて触れたレポート「What is Liquid Staking and How is frxETH V2 Radically Changing lt?」を0xlide,Next Finance Techで翻訳を行った。また本レポート(原文)は、2023年6月のレポートであることをご容赦頂きたい。

2. Liquid Stakingの本質は「融資」

Lido, RocketPool, Frax Financeの全てにおいて、これらの仕組みの背後にある概念は、顧客がProtocolを介してETH Stakingのインセンティブ(報酬)を稼ぐValidatorに対しETHを貸し出し、Validatorによって獲得されたETH Stakingのインセンティブ(報酬)をLSToken保有者(顧客)に融資でいう利子にあたるかたちで返還するということである。そして、上記3つのLiquid Staking Protocolでみられた大きな違いは、ValidatorのLTV・各Protocolの信頼を必要とする箇所・Validatorによるセキュリティ保証の3点に限られている。

これらを考慮した結果、Frax Core Teamの出した結論は、
最高のLiquid Staking Protocolを設計は、Validator向けの最適な融資市場(Lending Market)を構築することであった。

最高なLiquid Staking Protocolの構築に強く求められる4つの機能は:
・ETHを借りるのに最適なレート
・Decentralization, 信頼の最小化, Validatorのセキュリティ保証
・取引するのに十分な流動性
・DeFiの統合にやさしいToken構成
である。

これに基づき、Frax Core TeamはfrxETH V2が他のどのLiquid Staking Protocolより優れた設計をした。

3. frxETH V2の革新とその仕組み


frxETH V2は、Validator向けのDexentrazed/P2PなETHの融資市場を構築する。
これの理解にあたってもっとも簡単な方法は、FraxlendやAaveに類似したETH専用の独立した融資プールだと思うことである。 Validatorは借入金利が動的な融資プールから手数料なしでETHを借りることができ、融資プールからETHを借りた分の金利のみが請求される。

ETHの借入金利がValidatorのETH Staking報酬より低い場合(=融資プールからETH Stakingされてる割合・借入率が低い場合)、Validatorには融資プールからETHを借りる経済的な動機(インセンティブ)が生まれる。そして、ValidatorはMEVやその他の収益も含め報酬を獲得し、sfrxETH保有者に対しては金利を支払う。また、融資プールからETH Stakingされている割合・借入率が高い場合、ETHの借入金利はValidatorのETH Staking報酬を上回るためValidatorはBeacon ChainにロックしたETHを解除し融資プールに返還しETH Staking報酬から借入金利を除いた分を受け取る。

frxETH V2は借入金利が動的であることで、最も効率の良いValidatorが最適な量を最大限借りるよう経済的な行動を促す。また、平均を下回るValidatorは利益が運用コストと借入金利の合計を下回るため融資プールにETHを返還するよう促される。これによって、frxETH V2は効率の良いValidatorだけが残り、他のLiquid Staking Protocolに比べ高いETH Stakingの利回りを提供することが可能になる。

3.(1) 悪質なValidatorを清算し削除する

frxETH V2のValidatorは、ETHを借りるさいにFrax Protocolと融資のための契約(*Code Contarct)を締結する。

ETHの融資をうけるには、Validatorはvalidator public keyを登録し、frxETH V2の融資市場をwithdraw_addressとして設定する必要がある。ValidatorがBeacon ChainでのETH ロックを解除するとFrax Protocolによって制御されたAddreesに送られる(=融資プールに返還される)ため、顧客の資産を保証できる。

Validatorは他の融資市場と同じく決められた担保率(LTV)を維持する必要がある。"Slashing"をされた場合、そのValidatorのLTVは低下し最終的には清算される可能性があり、Validatorは担保を追加するか清算されるか選ぶことができる。また、Frax ProtocolはValidatorが決められたLTVを下回る場合、その時点で強制的にロックされたETHをBeacon Chainから引き出し担保資産を守ることができる。

3.(2) Permissionless Validators

frxETH V1では、3/5マルチシグのもとFrax Core Teamが全てのValidatorを管理している。これはLaunchの速さと初期の成長には必要なものでしたが、十分に成長し成熟したいまこの集中的な管理は危険でありFrax Protocol全体の安全性を脅かしてしまっている。

frxETH V2が開始されると、多様なValidatorがこの融資市場にアクセスしETHを借りられるようになる。これは、frxETH SystemはDecentralizationを確保し、frxETH V1マルチシグの署名者が過剰なリスクを負わず、安全な方法で拡張と成長できることを示す。

ValidatorはfrxETH V2の融資市場にアクセスしETHを借りるために最低額(例えば8ETH)以上の担保をdepositする必要がある。前述したように、ETHの融資はwithdraw_addressをFrax Protocolの融資市場に設定したValidatorのみに貸し出される。

このシステムの特徴は、どのValidatorも信頼する必要がなく、またどのValidatorも匿名で参加できることである。全ての融資資産(ETH)の安全性は全ての融資を追跡するFrax Beacon Oracleによって保証される。

現時点ではBeacon Chainの状態をスマートコントラクト(コードコントラクト)を介して読み取ることはできないため、frxETH V2ではValidatorの状態を更新するにはOracleを作成する必要がある。Frax Beacon Oracleはゼロ知識証明技術を活用し、融資が適正であるか計算し証明する。このOracleによって、Validatorに不健全な融資が発覚した場合、強制的に担保を融資市場に送金させる。

frxETH V1からfrxETH V2へアップグレードするにあたってのドレードオフが存在する。Validatorが融資資産を持ち逃げしたりSlashingされたりしないということを信頼する代わりに、Frax Beacon Oracleがvalidatorへの融資の状態を監視し適切に作動するということを信頼する必要がある。

3.(3) 融資PoolのETHとCruve AMOでの運用

frxETH V2の融資市場でPoolされているETHは、Frax Protocol独自の技術であるCurve AMOにDepositされる。これにより、顧客は深い流動性にアクセスすることが可能になる。

frxETH v2の融資市場は、AaveやFraxlendのような他の融資市場と同じく融資Pool内の使用率(utilization rate)で借入金利は計算される。Validatorたちが借りているETHが増えれば増えるほど融資Pool内の使用率(utilization rate)は上昇する。"Vertex Utilization(融資Poolの最適な借入量の点)"を超えると、借入金利は大幅に上昇し、借入限度量(Borrow Cap)に達すると最大借入金利が適用される。また、Vertex Utilizationは、Liquid Stakingという名の融資市場において適正値である必要がある。


frxETH V2では、融資Poolの余剰ETHを流動性を深めCRV/CVXを稼ぐ、Curve AMOに適量に配分できるよう、Vertex Utilizationは設定される。

V1では融資された資産(ETH)の10%がCurve AMOにdepositされ、Cruve V2上のfrxETH Poolでペアになった。結果、frxETH/WETHペアPoolはCurve上のETH PoolとしてTVL2位になり、LSTの流動性/時価総額の比率では最も高く、それはfrxETHが最も深い流動性を持っていることを指す。

また、Curve LP内で興味深いのは自動的にバランスが取られることである。
Validatorの借入需要が低い場合、融資Poolの利用率は下がり借入金利は低下する。市場はfrxETH/ETHペアのPoolはETH側に多くの流動性が傾くためfrxETHを新規にmintするよう促される。

また、Validatorにはこの時点でfrxETHを借りCurve LPに売却することでスプレッドを取るよう推奨すべきである。

Validatorの借入需要が高い場合、Vertex Utilizationを超え、借入金利が急上昇しLiquid StakerであるsfrxETHの保有者は高い利回りを獲得する。このように、frxETH V2の融資市場ではどちらか二つのメリットのある状況が生まれる。Liquid Stakerはより多くのETHをfrxETHにスワップし、sfrxETHコントラクトにdepositすることで他のLiquid Stakingより高い利回りを出す。Validatorは高い借入金利からETHを返却し利用率を下げる。これにより借入金利が下がり、他の効率の高い事業者が借りられるようになる。

frxETH V2の仕組みは、ETH Staking市場の自然な利回りを中心に自律的にバランスをとるよう設計されている。Validatorは利益を超える借入金利で融資を受けることはない。逆に、報酬に比べて安価な ETH 融資は、利益を増やしたい新しいValidatorsを常に引き付けるはずである。

4. おわりに

frxETH V2は、EthereumネットワークにおけるLiquid Stakingの新しい段階を切り開いています。その設計は、従来のステーキングプロトコルとは異なり、融資市場としての機能を持ちながらValidatorの質を向上させる仕組みを持っています。Frax Financeの革新は、Liquid Stakingプロトコルの未来を方向付ける重要なステップとなり、今後も多くの注目を集め続けるでしょう。この分野の発展は、さらなるDeFiの成長とイノベーションを後押しすると期待されます。