Uniswap:市場取引と金融商品・取引所の理解

目次

  1. はじめに
  2. 市場取引
     1. 金融商品
     2. 取引所
     3. 販売所
     4. マーケットメイカー
  3. おわりに

1. はじめに

まずDeFi(Decentralized Finance)について簡単に振り返る。DeFiは、2017年から2018年にかけて、ブロックチェーン技術やスマートコントラクト等の発展と共に、中央集権的な既存金融に対するアンチテーゼとして生まれた。2020年から2021年はDeFi Summerと後に呼ばれるほど、市場が急速に成長した年で、為替、レンディング等の機能を提供するDeFiプロトコルが数多く生まれた。しかし、2022年以降はTerraショックやFTX事件など、セキュリティ面やガバナンス面での懸念が顕在化してきた。

従って一般的な内容の説明に留まっている事をご容赦頂きたい。

2. 市場取引

2.(1) 金融商品

はじめに、導入の位置づけとして「金融商品」について考える。通常の商品(例えば食料品や工業製品)と比べたときの、金融商品の違いは何か?複数の違いがあるが、消費者の観点においては、「陳腐化しない」ということがあげられる。

例えば食料品は、時間とともに痛みが発生する。工業製品は、その速度は食料品よりは緩やかではあるが、確実に陳腐化するとともに、新品と中古品(一度消費者の手に渡った商品)の間には、差が設けられている。その結果、商品の流れは、基本的には生産者から消費者への一方向になる。

一方で金融商品には上記の概念がない。もちろん、例えば株式に「新規発行株式」というものはあるが、同じ会社の株式において、既存発行済みの株式と新規発行の株式に価値の差異はない。株式の取引に「中古」の概念はなく※1、当初の発行(一次市場、プライマリー・マーケット)の後に二次市場(セカンダリー・マーケット)において、双方向の売買がなされることに特徴がある※2。金融商品と同様の性質をもつものには金やプラチナ等の貴金属があり、これも二次市場が発達している商品である※3。

このとき、二次市場には「売値」と「買値」が存在し、取引の形態には「取引所」と「販売所」が存在する。

2.(2) 取引所

取引所とは、商品を売りたい人と買いたい人の双方が、希望価格を提示し、価格が合致したときに取引が成立する場所のことをいう。代表的な市場は、株式市場や各種の銀行間取引である。株式を買いたい人は、証券会社を通して希望購入価格と数量を取引所(東京証券取引所等)に伝え、希望購入価格に合致する売値が出たときに、提示の先着順に取引が成立する仕組みになっている。

希望購入価格には、指値と成り行きがあり、前者は具体的な金額を指定すること、後者は金額を指定せず現在の価格で提示者に有利なものから数量を満たすだけ購入(売却)することをいう。

取引所での取引の利点は、消費者が希望する価格での売買ができるということである。一方で、欠点としては、必ずしも取引が成立するものではないということがあげられる。

2.(3) 販売所

販売所とは、販売所が商品の売値と買値を提示し、合理的な数量であれば、その価格での成立を約束する形式のことをいう。代表的な市場は、銀行での個人向けの外貨両替取引や、証券会社での事業会社向けの債券取引である。

販売所の価格の設定は販売所に委ねられている。通常は、売値と買値の間に一定のスプレッドを設けることになる。このため、消費者から見たとき、販売所の価格設定は不利なことが多く、欠点になる。一方で、提示されている金額で確実に取引が成立することは、利点といえる。

2.(4) マーケットメイカー

マーケットメイカーとは、市場において、常に売値(気配値)と買値(気配値)を提示して、合理的な範囲の数量での成立を約する人のことをいう。マーケットメイカーの役割は、市場での商品の流動性を高めることにある。

※1:すべての株式が中古の株式ともいえる。

※2:参考として金融取引で「市場」は「しじょう」と呼ぶ。広辞苑の定義を解釈すると、「いちば」は物理的に存在する場所を指すのに対し、「しじょう」はそれを前提としておらず、前者を包含する概念となっている。

※3:歴史的には、貴金属市場の方が、金融市場よりも、圧倒的に長いものである。

3. おわりに

本レポートでは、Uniswapを理解するための基礎となる市場取引の概要を提供した。金融商品や取引所、マーケットメイカーについて理解を深めることで、Uniswapが提供する機能の重要性が明確になったと思う。次章では、Uniswapの特徴的な機能やその背後にある運営組織についてさらに詳しく探る。