メタバース概要


目次

  1. はじめに
  2. メタバースとは
  3. 注目されている理由
    (1) 文化的側面
    (2) 技術的側面
  4. メリット・デメリット
    (1) メリット
    (2) デメリット
  5. 最後に

1. はじめに

近年(特に2020年以降)、COVID-19の流行によって人々がバーチャルなコミュニケーションや体験を求めるようになりメタバースが注目されてきた。ベンチャー企業のみならず、Facebook(現Meta)などの大企業もメタバース事業の立ち上げを企てた。先行事例の創出が上手くいかないケースも見られたが、ゲーム領域を筆頭に一部の事業会社は、メタバースのユースケースを作り出していた。実際に、ベトナムのSKY MAVIS社が運営しているAxie InfinityというNFTゲームは、Play to Earn(ゲームで遊びながら稼ぐ)をコンセプトに、東南アジアを中心に流行した。実際に、プレイヤーはゲーム内で獲得したトークンを、DeFiを通じて換金できる仕組みである。本レポートでは、メタバースの分野について、定義や着目されている理由、メリット/デメリットを通じて、メタバースの概要を解説していく。

2. メタバースとは?

メタバースは、1992年SF作家ニール・スティーヴンスンの著作「スノウ・クラッシュ」の作中で登場するインターネット上の仮想世界を表す言葉である。現在では主に将来におけるインターネット環境が到達するであろうコンセプトモデルや仮想空間サービスの通称として使われている。メタバースに関しては様々な方が既に色々な定義をしているが、私たちのメタバースの定義は以下の特徴を満たすものである[1]。

  1. 「リアルと同じ時間軸で進み、現実と行き来できる」
  2. 「いつでも誰にでもオープンな場である」
  3. 「経済圏がある」
  4. 「様々なユーザーが創るコンテンツや体験がある」
  5. 「相互運用性がある」

これはソードアートオンラインやレディ・プレイヤー1で描かれているような世界、といわれるとイメージしやすいかもしれない。これらの特徴をすべて満たすメタバースは現時点ではほとんど存在しないが、これまでにも様々なサービスがメタバース(に近いもの)として生まれ、成長、発展してきた。これらのメタバースは「メタバースの種類」というレポートで解説している。

3. 注目されている理由

第1章でも触れたように、本章ではメタバースが注目されている背景を、文化的側面と、技術的側面に分けて解説していく。

3.(1) 文化的側面

  • ダイバーシティの促進
    • メタバースは仮想空間上で誰とでも直接交流できるため、世界中の多様な文化やバックグラウンドを持つ人々と交流し、ダイバーシティを促進していく。
    • さらに、2022年のWEFではMeta、Sony、Microsoft、LEGOなどの大手企業が、包括的なメタバースを目指すべく、倫理的かつ包括的なメタバースを創造するためのイニシアチブ「Defining and Building the Metaverse」を発表した[2]。
  • 創造性の表現
    • 昨今のグラフィック技術の進化に伴い、メタバース内での表現の自由度が非常に高くなっており、創造的な作品が生まれやすい場所になっている。
    • また技術的な表現力以外にも、メタバース内でのソーシャルネットワーキングを活かしたコラボレーションが生まれやすいといった事も言われている[3]。
  • コンテンツの消費形態の変化
    • コロナ禍により人々は家で過ごす時間が増え、ソーシャルメディアを活用したコミュニケーションが増えて、よりリッチなコンテンツが求められていた。
    • メタバース上で新しい種類のコンテンツを体験することが登場し人気が高まった。主な例としてFortniteでの世界的有名DJ(Travis scott)のライブ等があった。

3.(2) 技術的側面

  • 通信技術・演算能力の進化
    • メタバースの実現には、高速な計算能力、高速なデータ伝送能力、高度な演算能力などの要素が必要である。直近は5Gの登場や、GPU進化に伴う演算能力向上に伴い、メタバースのような高度なデジタル空間や、複雑なインタラクションが可能となった。
  • VR技術(仮想現実技術)の進化
    • 本格的なメタバースの実現には、ユーザーがメタバースに没入して現実世界のように感じさせるためのVR技術が重要である。直近ではMetaが提供する高性能VRヘッドセットにより、現実空間とほぼ相違ない程に楽しむ事が可能となった。

4. メリット・デメリット

さて、前章ではメタバースが注目されている理由を解説してきた。メタバースは良い面、面白い面が取り上げられがちであるが、一方で、メタバースが流行する事で孕むリスクも認識する必要がある。本章では、それぞれメリットとデメリットを見ていく。

4.(1) メリット

  • 表現の幅広さ
    • 現実社会ではできない表現や活動が、メタバース上では可能になった。例えば、アバターを通じて自分自身を表現することができる。
  • 地理的制約からの解放
    • 現実社会では遠方に住んでいる人との交流や、遠くにある観光地に行くことが難しい場合でも、メタバース上ではリアルタイムで観光をする事ができる。
  • オンラインビジネスの拡大
    • メタバース上にビジネスを展開することで、地理的制約を受けないビジネス展開が可能となった。例えば、ファッションブランドの仮想店舗の開設が考えられる。

4.(2) デメリット

  • メタバースへの過度の依存
    • メタバース上での人間関係が現実社会よりも重視されるようになることで、現実社会での人間関係が希薄になる恐れがある。
  • ネット上のいじめなどのリスク
    • 匿名性が高いため、メタバース上でのコミュニケーションによるいじめや差別などの問題が起こる可能性がある。
  • 健康問題
    • メタバース上でのアバター操作が長時間続くと、目の疲れや腰痛などの健康リスクがあることが報告されている。

5. おわりに

さて、本レポートではメタバースの定義から、注目されている理由、メリット・デメリット等を解説してきた。はじめにでも触れたように、メタバース空間内で利用されている暗号資産で、かつDeFi上で交換可能なものも登場してきた。これにより、ユーザーがメタバース内のゲームで獲得した暗号資産をDeFiを通じて換金する事で収益を獲得することができるようになった。そのような状況に鑑みると、今後、メタバースがよりリッチなコンテンツを提供してユーザーが増えると、DeFiの代表的なユースケースとして、メタバース内で獲得した暗号資産の交換などが増える可能性もある。今後もメタバース領域の動向には注目していきたい。

参考文献

[1]:オープンメタバースの必要性 | 前半 . Off Topic . https://offtopicjp.substack.com/p/open-metaverse-part1.
[2]:New Initiative to Build An Equitable, Interoperable and Safe Metaverse . World Economic Forum . https://www.weforum.org/press/2022/05/new-initiative-to-build-an-equitable-interoperable-and-safe-metaverse/
[3]:The metaverse and the future of creativity—what it means for creators . FAST COMPANY . https://www.fastcompany.com/90767915/the-metaverse-and-the-future-of-creativity-what-it-means-for-creators